刑事訴訟法論文マスター

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伝聞証拠の意義

そもそも、伝聞証拠の趣旨は、伝聞証拠に対しては反対尋問や裁判官による供述状況・態度の直接認識・観察等をなしえないという点にある。すなわち、供述証拠は知覚、記憶、叙述の過程を経て証拠化されるところ、各過程には誤りが介在するおそれがあるので、宣誓とこれに伴う偽証罪による処罰の予告がなされる公判期日において、反対尋問(憲法37条2項前段参照)による吟味、裁判官による供述状況・態度の直接認識・観察が必要である。しかるに、伝聞証拠に対してはかかる反対尋問や裁判官による直接認識・観察をなしえない。故に伝聞証拠の証拠能力は否定されるのである。
そこで、かかる趣旨にかんがみ、伝聞証拠にあたるか否かは、供述内容の正確性・真実性について反対尋問等による吟味が要請されるか否か、すなわち、要証事実との関係で相対的に決せられると考える。
したがって、伝聞証拠とは、公判期日外の供述を内容とする証拠で、その供述内容の真実性を立証するために提出・使用される証拠をいうと解する。

2

自白排除の基準

そもそも、府任意自白の証拠能力が否定される根拠は、かかる自白は虚偽であるおそれが類型的に高く、誤判を招くおそれがあること及びかかる自白の証拠能力を否定することによって黙秘権を中心とする人権の侵害を防止し、もって人権保障の実効性を担保することにあると解する。
そこで、不任意自白か否かは、①虚偽自白を誘発する状況の有無、②黙秘権を中心とする人権を不当に圧迫する状況の有無によって判断すべきと考える。

3

違法収集証拠に基づく派生証拠の証拠能力の有無

この点について、派生証拠の証拠能力を全て肯定してしまうと、排除法則が骨抜きになってしまう。
他方、およそ全ての派生証拠の証拠能力を否定してしまっては、真実発見(1条)に反する。
そこで、派生証拠の証拠能力が認められるか否かは、ⓐ先行手続の違法の程度や、ⓑ両証拠の関連性を考慮して個別的に判断すべきである。

4

「公訴事実の同一性」(312条1項)の判断基準

この点について、一つの刑罰権の対象となる事実については、一回の刑事手続で一度だけ処罰すれば足りる。そして、一つの刑罰権の対象となる事実について別訴が併存し二つ以上の有罪判決が重複して存在する可能性があるとすれば、それは二重処罰を生じさせ得るものであるから許されるべきではない。
そこで、「公訴事実の同一性」とは、新旧両訴因が、一回の刑事手続で一度だけ処罰すれば足りる関係にあること、すなわち、別個の手続でそれぞれについて有罪判決が併存すると二重処罰の実質を生じるような関係にあることをいうと解する。
具体的には、新旧両訴因間に①単一性と②同一性がある場合に、「公訴事実の同一性」があると解する。
そして、①単一性については、実体法の罪数論を基準として、また、②同一性については、基本的事実関係の同一性を基準として判断すべきと考える。

5

「強制の処分」の意義

この点について、科学的捜査方法による人権侵害の危険が高まっている今日においては、「強制の処分」(197条1項ただし書)か否かは処分を受ける側の侵害態様を基準とすべきである。
もっとも、権利・利益の内容や程度を考慮しなければ、ほとんどの捜査活動が「強制の処分」となりかねず、真実発見(1条)に反し妥当でない。
そこで、「強制の処分」とは、相手方の明示又は黙示の意思に反して、重要な権利・利益の制約を伴う処分をいうと解する。

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任意捜査の限界

~「強制の処分」(197条1項ただし書)にあたらないことの認定~
もっとも、任意捜査といえども無制約ではなく、適正手続(憲法31条)の見地から、必要性、相当性が認められる限度において許容されると解する。

7

違法収集証拠排除法則の肯否及びその判断基準

この点について、違法収集証拠を無制約に許容すると、適正手続を受ける権利の保障(憲法31条)を無にし、将来における違法捜査の抑制及び司法の廉潔性が全うされない。
もっとも、些細な違法があるにすぎない場合にも常に証拠能力を否定するのであれば、真実発見(1条)を著しく困難にならしめることになり妥当でない。
そこで。①証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②これを証拠として許容することが将来の違法捜査抑止の見地から相当でない場合に限り、証拠能力を否定すべきと考える。

8

「必要な処分」の意義

この点について、適正手続(憲法31条)の見地から、「必要な処分」(222条1項・111条1項)とは、①執行の目的を達成するために必要であり、かつ②社会的にも相当と認められる処分をいうと解する。

9

逮捕に伴う無令状差押えの物的範囲

逮捕に伴う無令状での捜索・差押えは「必要があるとき」に認められる(220条1項柱書)。
そして、「必要があるとき」とは、捜索・差押えに際しては、差し押さえるべき物と逮捕被疑事実との関連性が要求される。
したがって、逮捕に伴う無令状での差押えは、逮捕被疑事実に関連性のあるものに限られると解する。

10

「現行犯人」の判断基準

この点について、212条が令状主義の例外として現行犯逮捕を認めた趣旨は、現行犯の場合、犯罪の嫌疑が明白で誤認逮捕のおそれがない点にある。
そこで、「現行犯人」(同条1項)に当たるためには①犯罪と犯人の明白性、②現行性が必要と解する。

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「逮捕の現場」の判断基準

この点について、220条が令状主義の例外として無令状での捜索を認めた趣旨は、逮捕の現場に証拠が存在する高度の蓋然性及び、証拠の破壊をを防ぐ緊急の必要性にあると解する。
そこで、「逮捕の現場」(同条1項2号)とは、かかる緊急の必要性が認められる場所的範囲、具体的には被疑者の身体又はその直接的支配下をいうと解する。

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逮捕が前置しているか否かの判断基準

そもそも、逮捕前置主義の趣旨は、身柄拘束につき二重の司法審査を保障することにあり、その審査は、被疑事実ごとになされる(200条1項・64条)。
そのため、被疑者の逮捕が先行しているかどうかは、人でなく事件、すなわち被疑事実を基準として判断すべきである。

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「逮捕する場合」の判断基準

そもそも、220条の趣旨は、逮捕の現場には、証拠の存在する蓋然性が高いことに加えて、被疑者等による証拠隠滅の危険も高いためこれを防止して証拠を保全する緊急の必要性が認められることにある。
そこで、「逮捕する場合」(同条)とは、現に被疑者を逮捕する状況が存することを要する。